中国での学び方
「中国語を学ぶ」という点では学ぶ場所が日本でも中国でも基本的には同じです。ですが、「中国にいる」がゆえに、「留学である」がゆえに生じる違いもあります。
その違いをどのように克服し活用し中国留学を成功へと導くのか。重要なポイントについて説明します。
中国に持っていく勉強道具
ノートや筆記用具などは当然として、絶対に持って行くべきものが2つあります。
辞書
さすがに辞書がないと勉強のしようがありません。中日辞典は絶対に必要です。中国でも大きな書店ならば中日辞典は売られていますが、やはり中国で編纂したものですので内容は今ひとつです。日本で使い慣れた辞書をそのまま中国に持ち込みましょう。日中辞典はなくてもそれほど困ることはありません。
紙の辞書でも良いですし、もちろん電子辞書でも大丈夫です。単4電池は中国でも売っています。スマホのアプリでも使い慣れたもので内容が充実していれば問題はありません。
ただし、中国のモバイルネットはパケ放題ではなく従量制です。使ったデータ量に比例して料金が増えます。また、教室や寮の部屋によっては電波がよく届かないこともあり得ますので、オフラインで使えるアプリを選んだほうが安全です。
文法書
教科書があるのだから文法書は必要ないと思っている方がたまにいらっしゃいますが、それはとてつもなく大きな勘違いです。留学中に使うテキストには文法の説明はほんの少ししか書かれていません。しかも日本語ではなく中国語か英語です。ですので、教科書だけで文法の内容を理解することは至難の業です。また、予習のときや、授業中の先生の説明が分からなかったときなどにも文法書は必ず必要です。
その一方で、地方都市は言うまでもなく北京や上海など日本人が多く住む大都市でも、日本語で書かれた中国語の文法書はほとんど売られておらず、中国についてから入手するのはほぼ不可能です。ですので、留学する際には中国語の文法書を日本から必ず持参してください。
文法書を読んでよく理解できなかったけれど、別の文法書の説明を読んだら理解できた、というのもよくあることです。日本で使っていた文法書と、それとは別の筆者が書いた文法書の合わせて2冊を持って行くとさらに良いでしょう。
また、中級レベルになるとたくさんの類義語が出てきます。微妙なニュアンスの違いなどは中国語で説明を聞いても分からないことがよくあります。類義語の違いを説明した参考書もあれば良いでしょう。
分かりやすい辞書、文法書、テキストについてはオススメの中国語教材のページで紹介していますので参考にしてください。
最重点は予習!
中国留学でもっとも重要なのは予習です。どこまできっちり予習をするか、予習の精度をどこまで高めるかで留学の結果が決まると思ってください。
中国の大学では一番下のクラスを除いて、授業はすべて中国語だけで行われます。特に最初のうちはリスニングの能力が低いですので、先生が話す内容を聞き取るだけで精一杯です。予習が不十分でテキストで知らない単語が出てきたりすると、それを辞書で調べている間に授業はどんどん先に進んでいってしまいます。そうなると話の流れにもついていけないし、文法内容の説明を聞き落とすことにもなります。
また新学期が始まって最初の頃はみんな授業に出てきますが、徐々にサボりだして出席する学生は減っていきます。そうなると残っているのは熱心な学生だけです。当然、予習は完璧に済ませています。彼らと教師を中心にテキストの内容を理解した前提で授業が進んでいきますので、予習が不完全な学生はますますクラスのレベルについていけなくなり、いつの間にか脱落してサボり組のメンバーになるというのはよくあるパターンです。
そもそも、知らない内容を授業に出て一から教えてもらおうという姿勢が甘え過ぎです。本来の学習とは自分で勉強して調べて納得して初めて身に付くものであり、手取り足取りでゼロから教師に教えてもらうようなものではありません。予習なしで100%受け身で授業に出ても、そのときは分かったつもりでいるのですが実は定着していません。予習段階で辞書を引き、分からない文法内容を調べ、教科書の内容の最低でも90%までは分かった状態にし、分からなかった残りの10%を質問する場所が授業です。
つまり、授業に出て新しい内容をゼロから教えてもらうという考え方がまったくの間違いであり、「予習で理解 → 授業で確認 → 復習で再確認 → 互相学習・実生活で使って定着」が中国留学での正しい勉強の仕方であるということです。
予習が不完全で理解不十分な状態で授業に出ることは恥ずかしいことだと思ってください。そんな姿勢では語学を身に付けることはできません。毎回、予習を完全に済ませて授業に出るのは大変ですが、辛抱して半年続けてみてください。必ず結果が出ます。
閲読の上手な使い方
閲読は長文を読み取る科目です。(文法と一緒になっている大学もあります)
閲読の授業の最大の目的は、知らない単語があっても前後関係からその単語の意味を類推し、文章全体の大意をつかむことです。ですから、予習段階でも最初は辞書を使わずに最後まで読み設問の解答を出すことが重要です。知らない単語を一つずつ調べていると、前後関係から単語の意味を類推する力がつきません。
HSK試験はいうまでもなく、日常生活でも知らない単語はたくさん出てきます。つまり、前後関係や文章の流れから知らない単語の意味を類推する閲読の訓練は、日常生活でも大いに役立ってくるということなのです。
ただし、閲読でも精読(一文一文正確に読み取ること)は必要です。最初に辞書を使わずに読んだあと、今度は辞書と文法書を広げて、一文ずつ丁寧に読み込んでいってください。
実はこの作業が非常に重要です。なぜならば、自分のクラスの文法の授業では習わない文法内容を勉強できるからです。例えば留学して中級班になった人は初級班やゼロスタートのクラスの文法の授業で出てくる文法内容は習っていません。それらの中にも自分が知らない内容はけっこうあるものです。閲読の教科書を精読することで、自分のクラスの文法の授業では習えない内容の勉強もできますし、すでに知っている文法内容の復讐をすることもできるのです。
一教科でいいからテープを買う
教科書の音読はとても大切であり、また効果も大きいです。何度も繰り返し声に出して読むことで、中国語のフレーズの成り立ちが自然と頭に入ってきます。文法という理屈で覚えた内容を、口を動かすことによって肉体的に定着させる作業です。
ですのですべての強化は無理としても、どれか一つの教科についてはテキストの内容を読み込んだテープを買って音読の練習をしましょう。おすすめは文法か閲読です。音読の練習は次のようにやると効果的です。
- 1.最初は一文ごとに音声を聞いてはテープを止め、自分も同じように読む。妥協せずスムーズに読めるようになるまで繰り返します。
- 2.次にテープを聴きながら、テープの音声より少し遅れて読む。このときは教科書を見ながらでかまいません。
- 3.次に教科書を見ずに、テープの音声を頼りにテープより少し遅れて読む。
- 4.最後にテキストを見ながら、テープの音声に重ねるように一緒に読む。
これを繰り返していくと、自然に中国語のリズムやパターンが身についてきます。半年経つと、穴埋め問題(特に助詞、助動詞、補語)などで、「理由は上手く説明できないけど答えは絶対これだよな」という感覚が身に付いてきます。
なお、聴力の授業では集中力を高めて聞き取り、前後関係と聞き取れた単語から文の大意をつかむ練習をします。予習段階でテープを聴いてしまうと、何度でも聞けることから集中して聞き取る練習になりません。聴力の予習は必要ありません。聞き取れなかった部分を復習で何度も聞くというのは効果があります。